0. はじめに
最近、社内でも「AIで業務改善しよう!」がトレンド入りしています。
そんな中多くのAI改善で起こりがちなのが、「AIを業務に"組み込む"こと」にフォーカスしすぎてしまうことです。
- 「この業務にAIを入れたい!」
- 「あの作業をAIに置き換えたい!」
- 「AIがあればなんでもできるんでしょ!!!笑」
AIを活用すること自体は全く否定しませんが、
AI業務改善は、「AIを業務に"組み込む"こと」だけではないと思っています!
この記事では、私がそう考える理由も含めて整理してみます。
1. そもそもAIには「苦手なこと」がある
LLM(大規模言語モデル)は、本質的に「非決定論的」な仕組みです。
非決定論的とは
非決定論的とは、同じ入力をしても毎回異なる出力が返ってくる、ということです。
例えばChatGPTに同じ質問を2回すると微妙に違う回答が返ってきます。
あれがまさに非決定論的な動作です。
決定論的とは
決定論的とは、同じ入力であれば必ず同じ出力が返ってくる、ということです。
業務の中には「決定論的」に処理すべきものがたくさんあります。
「申請区分がAならB部署に回す」みたいな条件分岐は、毎回同じ結果であるべきです。
AIをどこに組み込むのか
多くの場合、1つの業務は「非決定論的な部分」と「決定論的な部分」が組み合わさって成り立っています。
本来決定論的であるべき箇所ににAIを組み込むと、品質が不安定になったり、想定外の動作をしたり、かえって業務が複雑になるリスクが生まれます。
そのためAIを業務に組み込むかどうかは、 「その業務が決定論的に処理できるか、非決定論的な処理が必要か」 を見極めることが重要だと考えています。
2. どこから手をつけるか
業務フローの全体整理
この線引きを踏まえて、実際にAI業務改善に取り組むとき、私はまず業務フロー全体を整理するところから始めています。
いきなり作業に入るのではなく、まずは業務全体を俯瞰し、その中のどこを改善するか。
経験上、ターゲットを正確に決めた方が結果的に早く成果につながることが多いです。
<主な整理内容>
- 業務フローの各工程の中で、どこが決定論的でどこが非決定論的なのか
- 各工程(作業)のINPUT/OUTPUTは何か。
- 業務改善し一部を置き換えた際に、既存の前後の工程と接続できるように事前に整理します。
- それぞれの工程で、現状どの程度工数がかかっているのか
- 皆さんが日々実施している業務時間から集計できます。面倒であれば感覚値でも十分です。
業務改善ターゲットの特定
全体が整理できたら、業務フローの各工程の中から改善するターゲットを特定します。
判断する際に私が意識している軸は、「現状の作業工数」と「業務改善の難易度」 の2つです。
<現状の作業工数>
整理時に特定した業務内の各工程の作業時間です。工数が大きいところは改善効果が高く、初回ターゲットになりえます。
<業務改善の難易度>
難易度については、以下の2軸で評価しています。
- 業務の流れが事前定義できるか(固定)、臨機応変に変わるのか(動的)
- その業務でLLMにどの程度頼るか(回数/複雑さ)

まずは狙い目は、「固定ワークフロー × LLM解釈なし」 です。
その中から工数削減効果の高いものから着手します。
上記パターンでは工数削減の成果が少ない場合でも、そこで創出した10分は稼働20日/月で200分、年間で2,400分(40時間)になります。
そうして生み出した時間で次のレベルに挑戦する、という進め方をしています。
なお、これらどのパターンにおいても、ワークフローを「設計」「実装」する部分では、CodexやClaude Codeといったコーディングエージェントを利用して高速化・効率化しています。
3. 具体例で考えてみる
例えば、
「ユーザーから権限付与の申請を受けて、管理者が必要な権限を付与する」
という業務があったとします。
パターンA: AIに全部やらせる
申請内容をLLMが解釈し、ワークフロー自体をLLMが動的に生成。
付与すべき権限もLLMが判断する。
→ 動的ワークフロー × LLM解釈多 = 最も難しい
確かにかっこいいし、うまくいけば完全自動化できそうに見えます。
しかしLLMの判断がブレるたびに間違った権限が付与されるリスクもあります。
また権限周りはセキュリティに直結するので、ここがブレるのは危険だと思います。
パターンB: AIは"作る"ところで使う
まず、申請パターンと必要な権限の対応表を整理します。
この「パターンの洗い出し」や「各パターンで必要な権限の精査」にLLMを活用します。(ここは何度失敗してもいい。)
ワークフローの設計や実装にもAIを使って開発します。
上記によってできあがったシステムは、対応表に基づいて決定論的に処理します。
→ 固定ワークフロー × LLM解釈なし = 最も簡単
設計の考え方
私個人の考えですが、システムにおいて本来は精度100%を求めるべき、つまり非決定論的に実装できるのであれば、可能な限りそちらに寄せる方が良いと思っています。
そのほうが実装もテスト(検証)も楽なことも多いです。
非決定論でできないかを追求した結果、どうしても難しい最小限の範囲をLLMに代替してもらうようなアプローチで業務改善を設計しています。
4. まとめ
AI業務改善で大事なのは、「AIをどう組み込むか」ではなく、目的を意識し、「どこに使い、どこに使わないか」 を考えることだと思います。
AIという技術を前提に業務改善を考える。その改善過程でAIを使う。
出来上がったものにAIが組み込まれていなくても、これは「AIによる業務改善」だと思っています。
とはいえ自分もまだまだ試行錯誤の真っ最中なので、「こういう考え方もあるよ」「ここは違うと思う」など、コメントいただけたらとても嬉しいです。
これからも "AI業務改善" 頑張りましょう!!